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清沢満之をめぐる経済について
2 清沢の伝記
そういうわけで泥縄で伝記本の検索をはじめた。何冊か刊行されているが、宗門関係者が書いたものは、宗門イデオロギー
が顔を覗かせがちで、読むのが鬱陶しいので避けたい。結局、次の二冊に絞り入手した。
(1)脇本平也つねや著 『評伝 清沢満之』 法蔵館 243頁
著者のお名前はこれまで知らなかったので、宗門外の人であろうと踏んで発注した。
ウィキペディアによると2008年に
逝去されている。
この本は昭和57(1982)年の初版で、それが未だに手に入る。(あまり売れなかったのだろう。)
(2)教学研究所編 『清沢満之 生涯と思想』 東本願寺 162頁
これは宗門内の本であるが、教学研究所というある程度公的な性質を持つ機関での編集のため、宗門臭さは薄いだろうと
踏んで発注した。こちらは2004年に第一刷、2008年に第二刷と順調に版を重ねているようである。
結果として、どちらの本も「当り」であった。日記、書簡の背景を理解するのに必要な情報の大部分は、この二冊から
得ることができる。
歴史的記事については当然重複するが、それぞれ異なる視点から書かれているため、同一事件をより詳しく多面的に
理解する助けになる。
また、(1)は『宗教哲学骸骨』の内容について手際よくまとめてあり、かつ『骸骨』の思想が晩年の清沢の思想に
結実した、という見方をはっきりと表している。いわば30年前に今村さんの視点を先取りしていたのである。
『清沢満之と哲学』の参考文献一覧にはこの本は載っていないので、おそらく今村さんは読まれなかったのだろう。
読まれたとしたら喜ばれたことだろう。
(2)はページ体裁のデザインが良い。全ページに注釈を表示する見やすい欄が設けてあり、有益な資料が載せられている。
読んだ結果としては二冊組で読むべきで、(1)が主、(2)が補助資料という関係である。
その後、次の古本を入手した。
(3)吉田久一 『清沢満之』 吉川弘文館 267頁
これは昭和36(1961)年に出版されたもので、私が入手したものは昭和61年の新装版である。
(1)の本より20年前に書かれたものであり、それぞれの著者の視点を形成する思想界の時代状況の変化が感じられて面白い。
こちらからも独自の情報が得られる。
以下、この三冊を引きながら述べることになるが、以降の文章では(1)を「脇本本」、(2)を「本山本」、
(3)を「吉田本」と略記する。