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縁起
それでは、「私の心のはたらき」は何によってあるのか。それは「私」「私の」と思うことそのこと
によるのである。そしてその思いから言葉が生れ、言葉によって「私の心のはたらき」である行が起り、
行によって心である識が作られ、識によって流転世界である名色が把握されてゆく。
したがって「私」と思うことそのことが苦悩の原因であり、またアートマン(我)・ブラフマン(梵)
と根を同じくするものである。
「しかし、そうすると苦悩からの脱出口を見出すことは不可能になる。なぜなら「私」と思わない
かぎり私は考えることができない、そして考えないかぎり脱出口を見つけることはできないのだから」
──「その通り。脱出口を見出すことは不可能だ。そして流転輪廻と苦悩の暗闇の中に閉じ込められ
なければならない。これを無明と言う。」
こうして苦悩からの脱出への探求は脱出不可能という絶望の結論をもって終結した。