真宗大谷派 西照寺

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縁起


7.2.7 触

 受は自分の行動において引き起こされるが、その行動はどのように成り立っているのだろうか。 再び食欲を例に考える。
 空腹を感じ(苦受)食物を求める行動を開始する。本人の立場によってその内容は様々である。 親に食物をせがんだり、台所に行って食物を取り出したり、店に買いに出かけたり、採取や猟に出かけたり、と。 そして食物を手に入れた後の食事を行う過程で、空腹感は徐々に解消していき、満足感(楽受)に変わる。 食事後は満足感も消えていき、食欲については特に悩まされない平衡状態(捨受)に移る。
 この食欲の発生から消滅までの一連の行動の中では、食物という対象が求められ、獲得され、摂取される。 求めているうちは意識(想念)に食物を思い描き、獲得し摂取する時は手で掴み味わい飲み下す物として 扱われる。このように意識と身体で対象(客体)を扱うことを触という。  触という漢字の意味からすると対象との身体的接触だけをイメージしがちであるが、それだけではなく、 欲が発生した時既に、意識の中で欲の対象が形成され、それを扱う作業が開始されているのである。 このような想念のみでの対象の操作も触は含む。すなわち触は欲が「ある」間中、「ある」。

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縁起

目次
引用文献一覧・凡例・更新履歴
1 はじめに
2 典拠による表現と意味
3 考えるということの道具立て
4 縁起表現の表と裏
5 縁起を語る釈尊の姿勢
6 縁起表現の構成
7 十二縁起支の解明
7.1 推理的順序による直列的な解釈例
7.2 縁起支をたどる
7.2.1 老死愁悲苦憂悩
7.2.2 生
7.2.3 有
7.2.4 取
7.2.5 愛
7.2.6 受
7.2.7 触
7.2.8 六処
7.2.9 名色
7.2.10 識
7.2.11 行
7.2.12 無明
7.3 転回
付録1 十二縁起の変節・説一切有部「三世両重因果」
付録2 伝許・伝説─世親の不信表明
付録3 「大乗」のニュアンス─世親、親鸞に通づるもの

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