真宗大谷派 西照寺

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縁起


7.2.6 受

 また、愛を別の面から考える。
愛すなわち欲望・欲求には様々な種類があるが、すべてに共通する性質がある。それは欠乏状態を 満たそうとする衝動・動機付けである。そしてこの衝動・動機付けが起きた時は必ず具体的な行動 を起す。行動によって欠乏状態が解消したとき衝動・動機付けも消滅する。つまり愛は「欠乏状態」 と「欠乏が満たされた状態」の二極の間の行動の過程ともいえる。
 この二つの状態は行動する本人にはどのような「感じ」を与えるのか。

  1. 欠乏状態
    苦しい、痛い、悲しい、寂しい、恐ろしい等。「気持ち」のマイナス状態。
  2. 欠乏が満たされた状態
      楽しい、嬉しい等。「気持ち」のプラス状態。
    の二種類である。さらに
  3. とりたてて欠乏が発生していない状態。
    「気持ち」がマイナスにもプラスにも偏らない状態。

これら三つの状態をまとめて「受」といいそれぞれを次の語で表す。

  1. 捨(不苦不楽)

したがって愛は受の三状態の「感じ」を移りゆくものの総称とも言える。

 ここで一つ問題が起きる。「希望」は受の三状態のどこに分類したらよいものだろうか。
欲望という面では苦への分類であるが、気持ちのマイナス状態は伴わない。そればかりか欠乏が 満たされた状態を先取りして、ある種の気持ちのプラス状態を得ている。その面では楽への分類 である。しかし、行動としては欠乏状態の中にある。そうすると希望は苦受、楽受の二状態に 同時にあると言わざるをえなくなる。

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目次
引用文献一覧・凡例・更新履歴
1 はじめに
2 典拠による表現と意味
3 考えるということの道具立て
4 縁起表現の表と裏
5 縁起を語る釈尊の姿勢
6 縁起表現の構成
7 十二縁起支の解明
7.1 推理的順序による直列的な解釈例
7.2 縁起支をたどる
7.2.1 老死愁悲苦憂悩
7.2.2 生
7.2.3 有
7.2.4 取
7.2.5 愛
7.2.6 受
7.2.7 触
7.2.8 六処
7.2.9 名色
7.2.10 識
7.2.11 行
7.2.12 無明
7.3 転回
付録1 十二縁起の変節・説一切有部「三世両重因果」
付録2 伝許・伝説─世親の不信表明
付録3 「大乗」のニュアンス─世親、親鸞に通づるもの

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