真宗大谷派 西照寺

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縁起


7.2.9 名色

 名色という言葉はウパニシャド由来であり、それが仏教に取り入れられて仏教的意味付けに 改変されたものである。その意味は五蘊に等しい。そして五蘊は五取蘊であり第四支の取と同一である。(注) 名色と五蘊の対応関係及びその意味を表にまとめると次のようになる。

 五蘊 意味その1意味その2
  名  心の個別的はたらき有情の心  有情の心 一切法(存在全体)
心そのもの
  色  肉体有情の身物質全体
[仏教学序説96]の内容から作成。

これらの意味を言い換えれば次のようになる。

 六処は名色によってある。
すなわち、六処という活動形態は「私」という主観における名色によって支えられている。



(注)このような、現代の文章表現の常識からすると掟破りとも言うべき論理展開や語彙の不統一性  が、十二縁起を表面上ますます複雑難解なものにし、また信頼性を下げている。
 つまり各支の間の「Aあるが故にBあり」の連鎖を、原因を絞り込んでいく論証体系とみなしてしま うと、第四支「取」の原因を絞り込んでいったら第九支に「名色」と名を変えた「取」がまた顔を出し てきた、ということになってしまうのである。すなわち「取の原因は取である」という同語反復になっ てしまう。
 我々はここで、まともな論理ではない、人をバカにしているのか、と十二縁起への理解の熱意が一  挙に失せてしまう心境に陥りかねない。
 しかし、これまで見てきたように各支分の関係を、原因を絞り込んでいく論証体系とみなしてはな らないのである。一連の論理の連鎖は同一のことがらの多面的な性格をえぐり出しているといった 方が適切で、「名色」と名を変えているからには「取」とは異なる面に注目して要点としていると見る べきである。同様のことが受、触、識、行についても言える。

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縁起

目次
引用文献一覧・凡例・更新履歴
1 はじめに
2 典拠による表現と意味
3 考えるということの道具立て
4 縁起表現の表と裏
5 縁起を語る釈尊の姿勢
6 縁起表現の構成
7 十二縁起支の解明
7.1 推理的順序による直列的な解釈例
7.2 縁起支をたどる
7.2.1 老死愁悲苦憂悩
7.2.2 生
7.2.3 有
7.2.4 取
7.2.5 愛
7.2.6 受
7.2.7 触
7.2.8 六処
7.2.9 名色
7.2.10 識
7.2.11 行
7.2.12 無明
7.3 転回
付録1 十二縁起の変節・説一切有部「三世両重因果」
付録2 伝許・伝説─世親の不信表明
付録3 「大乗」のニュアンス─世親、親鸞に通づるもの

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